遺言書を作ろうと決めたとき、最初に迷うのが「自分で書くか、公証役場で作るか」です。どちらも法律上の効力は同じです。違いは、作る手間と、亡くなった後の確実さにあります。
3つの方法の比較
自筆証書遺言は、自宅で保管する場合と、法務局に預ける場合とで、扱いが変わります。そのため、3つに分けて比べます。
| 項目 | 自筆証書遺言(自宅で保管) | 自筆証書遺言(法務局に預ける) | 公正証書遺言 |
|---|---|---|---|
| 作る人 | 本人が手書き | 本人が手書き | 公証人が作成 |
| 費用 | ほぼかかりません | 保管の申請1件3,900円 | 公証人の手数料(財産の額によって変わります) |
| 証人 | 不要 | 不要 | 2人必要 |
| 書式の不備で無効になるおそれ | あります | 形式は窓口で確認されます。内容の有効性までは確認されません | ほとんどありません |
| 紛失・書き換えのおそれ | あります | ありません | ありません |
| 亡くなった後の検認 | 必要 | 不要 | 不要 |
| 手書きが難しい場合 | 作れません | 作れません | 作れます |
「検認」は、家庭裁判所で遺言書の状態を確認する手続きです。申立てから1〜2か月かかり、その間は預貯金の解約などに進めません。
自筆証書遺言の決まり
自筆証書遺言は、次の4つがそろって、初めて有効になります。
- 全文を自分で手書きする。パソコンで作ったものや、代筆は無効です。
- 日付を書く。「令和8年10月吉日」のように、日が特定できない書き方は無効です。
- 氏名を書く。
- 押印する。
財産の一覧(財産目録)だけは、パソコンで作ったものや、通帳のコピー、登記事項証明書を付けることができます。その場合は、目録のすべてのページに、署名と押印が必要です。
無効になったり、争いになったりしやすい書き方
- 夫婦が1枚の紙に、連名で書いている(共同遺言は無効です)。
- 訂正の方法が、法律の決まりどおりになっていない。
- 「自宅は長男に任せる」など、相続させるのか、管理を頼むだけなのかが分からない。
- 不動産や口座が特定できない。
- 相続させる相手が先に亡くなった場合の定めがない。
法務局の保管制度
自筆証書遺言を、法務局(遺言書保管所)に預ける制度です。
- 遺言者本人が、予約のうえ、窓口に出向いて申請します。代理はできません。
- 申請先は、住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所です。横須賀市にお住まいの方は、横浜地方法務局 横須賀支局などが窓口になります。
- 用紙の大きさや余白など、決まった様式で書く必要があります。
- 亡くなった後、あらかじめ指定した方に、遺言書が保管されていることを通知してもらえます。
窓口で確認されるのは、日付・署名・押印などの形式だけです。「この内容で、希望どおりに財産が渡るか」までは見てもらえません。内容の確認は、専門家にご相談ください。
公正証書遺言の作り方
- 財産と、誰に何を渡したいかを整理します。
- 戸籍、印鑑証明書、不動産の登記事項証明書、固定資産税の評価証明書などを準備します。
- 公証人と、内容を打ち合わせます。
- 作成日に、証人2人の立会いのもと、公証人が内容を読み上げ、本人・証人・公証人が署名します。
原本は公証役場に保管されます。横須賀市内には、横須賀公証役場があります。病気などで外出が難しい場合は、公証人に、自宅・病院・施設まで出張してもらうこともできます。
証人には、未成年者、相続人になる予定の方、財産を受け取る方、その配偶者や子・親などは、なることができません。
どちらを選ぶかの目安
公正証書遺言が向いている方
- 不動産がある、または財産の種類が多い
- 相続人の間で、もめる心配がある
- 相続人以外の方や、団体に財産を渡したい
- 子がいないご夫婦、おひとりで暮らしている方
- 手書きが難しい、または高齢で、後から判断能力を疑われたくない
自筆証書遺言(法務局に預ける)が向いている方
- 財産が預貯金中心で、分け方が単純
- まず費用を抑えて作り、状況が変わったら書き直したい
- 公正証書を作るまでの、つなぎとして用意しておきたい
自宅で保管する自筆証書遺言は、見つけてもらえない、検認に時間がかかる、といった弱点があります。自筆で作る場合は、法務局に預ける方法をおすすめします。
行政書士に頼めること
当事務所では、自筆証書遺言の文案作成と書式の確認、公正証書遺言の原案作成、公証役場との日程・内容の調整をお受けしています。
- 自筆証書遺言のサポート:50,000円(税抜)から
- 公正証書遺言の原案作成:80,000円(税抜)から。公証人の手数料は別途かかります
相続税の試算が必要な場合は税理士、遺留分などで争いが見込まれる場合は弁護士へのご相談をご案内します。
この記事は、2026年10月11日時点の制度にもとづく一般的な説明です。個別の事情によって、必要な手続きや結論が変わることがあります。