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任意後見と法定後見の違い|親の認知症に備えて今できること

成年後見には、元気なうちに自分で決めておく「任意後見」と、判断能力が低下してから家庭裁判所が決める「法定後見」があります。違いと、今できる備えをまとめました。

公開日:2026年10月11日 | 執筆:行政書士 小田中 勇治

「親の物忘れが増えてきた。銀行の手続きができなくなったら、どうすればいいのか」。こうした心配が出てきたときに知っておきたいのが、成年後見制度です。

成年後見には、任意後見と法定後見の2つがあります。一番の違いは、誰が後見人を決めるかです。

2つの制度の比較

項目任意後見法定後見
使える時期判断能力が十分にあるうちに契約します判断能力が低下した後に申し立てます
後見人を決める人本人が選びます家庭裁判所が選びます
頼む内容契約で、本人が決めます法律と家庭裁判所の審判で決まります
手続き公証役場で、公正証書の契約を結びます家庭裁判所に申し立てます
始まる時判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだ時家庭裁判所の審判が確定した時
本人がした契約の取消しできませんできます(日用品の買い物などを除きます)
監督する人任意後見監督人(必ず選ばれます)家庭裁判所(必要に応じて監督人が選ばれます)

法定後見の特徴

すでに判断能力が低下している場合に使う制度です。本人、配偶者、四親等内の親族などが、家庭裁判所に申し立てます。判断能力の程度によって、次の3つの類型に分かれます。

  • 後見:判断能力を欠くのが通常の状態の方
  • 保佐:判断能力が著しく不十分な方
  • 補助:判断能力が不十分な方

知っておきたい点

  • 後見人は家庭裁判所が選びます。候補者として家族を挙げることはできますが、そのとおりになるとは限りません。財産の額や内容によっては、弁護士・司法書士などの専門職が選ばれます。
  • 専門職が選ばれた場合は、報酬がかかります。額は家庭裁判所が決め、本人の財産から支払います。
  • 目的の手続きが終わっても、後見は続きます。「預金を解約するためだけ」「家を売るためだけ」に使うことは、現在の制度ではできません。
  • 申立てから審判まで、通常2〜4か月かかります。

成年後見制度は、利用しやすくするための見直しが進められています。最新の情報は、法務省や家庭裁判所の案内をご確認ください。

任意後見の特徴

判断能力が十分にあるうちに、「将来、判断能力が低下したら、この人に、これを頼む」と決めておく契約です。公証役場で、公正証書によって結びます。

良い点

  • 信頼できる人を、自分で選べます。
  • 頼む内容を、自分で決められます。預貯金の管理、施設の入所契約、自宅の扱いなどです。
  • 報酬の有無や額も、契約で決められます。

注意点

  • 契約しただけでは、始まりません。判断能力が低下した後、家庭裁判所に申し立てて、任意後見監督人が選ばれた時に、効力が生じます。
  • 任意後見監督人の報酬がかかります。額は家庭裁判所が決めます。
  • 取消権がありません。本人が不要な契約をしてしまっても、任意後見人の立場では取り消せません。訪問販売などの被害が心配な場合は、法定後見のほうが向いていることがあります。
  • 亡くなった後のことは頼めません。葬儀や片付けは、死後事務委任契約で別に定めます。

任意後見と一緒に考える契約

任意後見契約は、結んでから実際に始まるまでに、何年も間が空くことがあります。その間を支えるために、次の契約を組み合わせます。

  • 見守り契約:定期的な連絡や訪問で、ご本人の様子を確かめます。判断能力の変化に早く気づき、任意後見を始める時期を逃さないためのものです。
  • 財産管理等委任契約:判断能力はあるが、体が不自由で銀行に行けない、といった場合に、支払いや手続きを任せます。
  • 遺言書:亡くなった後の財産の行き先を決めます。

親の様子が気になるとき、今できること

  1. 本人の考えを聞いておく。誰に頼みたいか、自宅をどうしたいか、どこで暮らしたいか。
  2. 財産の全体を把握する。通帳、保険、不動産、年金、借入れを一覧にします。
  3. かかりつけ医に相談する。判断能力の程度は、制度を選ぶ分かれ目になります。
  4. 判断能力があるうちに、契約や遺言を検討する。任意後見契約も遺言書も、判断能力が低下した後には作れません。
  5. 地域の窓口に相談する。お住まいの地区の地域包括支援センターで、介護や暮らしの相談とあわせて相談できます。

行政書士に頼めること・頼めないこと

当事務所では、任意後見契約書・見守り契約・財産管理等委任契約の文案作成と、公証役場との調整をお受けしています。任意後見契約書の作成は、100,000円(税抜)からです。公証役場の費用は別途かかります。

法定後見の申立書や、任意後見監督人の選任申立書など、家庭裁判所に提出する書類の作成は、司法書士・弁護士の業務です。行政書士は作成できません。当事務所では、制度のご説明と、どの専門家に相談すべきかのご案内を行います。

この記事は、2026年10月11日時点の制度にもとづく一般的な説明です。個別の事情によって、必要な手続きや結論が変わることがあります。

行政書士 小田中 勇治

トラストコンサルティング行政書士事務所(神奈川県横須賀市)。登録番号 第22090912号。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。成年後見・相続・遺言を専門にしています。

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