「入院の手続きで身元保証人を求められたが、頼める人がいない」。おひとりさまの方や、ご親族と疎遠な方から、こうしたご相談が増えています。
2026年、国の制度が大きく動きました
身寄りのない方の入院や老後を支える法律が、2026年6月に2つ成立しました。
1. 社会福祉法の改正―入院手続きの支援が「福祉の事業」に
頼れる身寄りがいない高齢者等に「日常生活の支援」「入院・入所の手続支援」「死後事務の支援」を行う事業が、新たに社会福祉事業として位置づけられました(2026年6月19日成立)。緊急連絡先の提供や入院費の支払代行などが想定されており、資力の乏しい方は無料または低額で利用できる仕組みです。
ただし、この事業の開始は公布から2年以内とされ、利用料や運営ルールを定めるガイドラインは国が作成している最中です。10月9日には厚生労働省が市町村職員向けの説明会を開いています。
2. 民法の改正―成年後見が「必要な間だけ」使える制度に
民法等の一部を改正する法律が、6月17日に成立し、24日に公布されました。これまでの「後見・保佐・補助」の3類型は「補助」に一本化され、必要がなくなれば利用を終えられるようになります。成年後見制度に関する部分の施行は、公布から2年6か月以内です。
国が本格的に動き出したのは心強いことです。けれども、どちらも実際に使えるようになるのはこれからで、入院は制度の開始を待ってくれません。
身元保証人がいないと、入院できないのでしょうか
身元保証人がいないことだけを理由に、入院を断ることは認められていません。厚生労働省は2018年、そのような取扱いが不適当である旨を全国に通知しています。
それでも現場では不安が残ります。東京都医療ソーシャルワーカー協会の調査では、身元保証人を用意できない場合に「断っている(断られた)」という回答が一定数ありました。
病院が身元保証人に求めているのは、「保証」という言葉より具体的な、次の6つの役割だとされています。
- 緊急の連絡先になること
- 入院計画書の説明を受けること
- 入院中に必要な物品を準備すること
- 入院費などを支払うこと
- 退院の支援をすること
- 亡くなったときの、ご遺体・遺品の引き取りや葬儀など
この6つを一つずつ手当てできれば、「保証人」という名前の人がいなくても、入院の手続きは進められます。
当事務所ができること―6つの役割ごとに
当事務所は、お元気なうちに結んでいただく4つの契約で、6つの役割に備えます。契約は公正証書で作成し、何をどこまでお引き受けするかを書面で明確にします。
| 病院が求める役割 | 当事務所の対応 | 根拠となる契約 |
|---|---|---|
| 1. 緊急の連絡先 | 事務所を緊急連絡先として病院に届け出ます。連絡を受けて、ご本人の意向の確認や関係者への連絡を行います | 見守り契約・生前事務委任契約 |
| 2. 入院計画書 | 入院手続きに同行し、書類の受け取りや説明の場への同席をします。ご本人の希望を事前に書面にまとめ、病院へ伝えます | 生前事務委任契約 |
| 3. 必要な物品の準備 | 日用品や衣類の手配、レンタル品の契約手続きをします。留守中のご自宅の郵便物や公共料金も管理します | 生前事務委任契約 |
| 4. 入院費の支払い | ご本人の預貯金から入院費を支払う手続きを代行し、請求書と領収書を管理してご報告します | 生前事務委任契約(判断能力が低下した後は任意後見契約) |
| 5. 退院の支援 | 病院の相談員やケアマネジャー、地域包括支援センターと連携し、退院先の調整や施設入所の契約手続きを行います | 生前事務委任契約・任意後見契約 |
| 6. 亡くなったとき | ご遺体の引き取り、葬儀・火葬・納骨の手配、病室の片付け、入院費の精算、役所への届出を行います | 死後事務委任契約 |
入院前から亡くなった後まで、同じ担当者が一貫して関わります。途中で窓口が変わらないことが、ご本人にも病院にも安心につながると考えています。
できないことも、正直にお伝えします
当事務所にはお引き受けできないことが3つあります。契約の前に必ずご説明しています。
- 手術や延命治療への「同意」:医療行為への同意はご本人だけの権利で、第三者が代わりに同意することはできません。成年後見人でも同じです。その代わり、お元気なうちに治療や最期の過ごし方のご希望を書面に残し、医療チームに確実に伝える役割を担います。
- 夜間・深夜の駆けつけ:行政書士1名の事務所のため、24時間の出動には対応していません。夜間の急変時は病院の判断で必要な処置が行われ、当事務所は翌朝以降に手続き面を引き継ぎます。
- 入院費の連帯保証と、預託金のお預かり:当事務所は入院費の連帯保証人にはならず、預託金もお預かりしません。ご本人の財産から確実にお支払いできる仕組みを整えることで、病院側の不安に応えます。
新しい制度を待たずに、今備える理由
公的な事業の開始を待たずに、今から備えておくことをおすすめします。理由は3つあります。
- 新しい公的事業は開始時期も利用料もまだ決まっておらず、お住まいの地域で誰が担うかもこれからです。
- 契約は、判断能力がしっかりしているうちにしか結べません。入院は突然やってくるため、倒れてからでは間に合わないことがあります。
- 公的事業が始まれば、そちらが合う方もいらっしゃいます。どちらが合うかも含めて、早めに比べておくことができます。
費用の目安は次のとおりです(税抜)。
| 契約 | 契約時の報酬 | 契約後にかかる費用 |
|---|---|---|
| 見守り契約 | 生前事務委任契約に含む | 月額5,000円〜(電話のみ)/月額10,000円〜(訪問あり) |
| 生前事務委任契約 | 50,000円 | ― |
| 任意後見契約 | 100,000円 | 後見開始後は月30,000円〜(財産状況により増減)。見守りの月額は終了します |
| 死後事務委任契約 | 100,000円 | 執行時に基本300,000円+内容に応じた加算 |
公証役場の手数料や葬儀費用などの実費は別途かかります。ご相談は初回30分無料です。
身寄りがなくても、入院をあきらめる必要はありません。「自分の場合は何から始めればいいのか」という段階でかまいません。横須賀エリアの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事は、2026年10月12日時点で確認できた制度の内容にもとづく一般的な説明です。新しい公的事業の開始時期・運用の詳細は、今後変更される可能性があります。個別の事情によって、必要な手続きや結論が変わることがあります。