亡くなった方の銀行口座が凍結されたら|預貯金の相続手続きと必要書類

口座の名義人が亡くなると、預金は引き出せなくなります。凍結される時期、当面のお金を用意する方法、解約までの流れと必要書類をまとめました。

公開日:2026年10月11日 | 執筆:行政書士 小田中 勇治

「口座が止まって、葬儀代が払えない」「公共料金の引き落としができなくなった」。相続の手続きで、多くの方が最初に困る場面です。仕組みを知っておけば、慌てずに対応できます。

口座はいつ凍結されるか

口座が凍結されるのは、金融機関が名義人の死亡を知った時です。多くの場合、ご家族が窓口や電話で伝えた時点で止まります。

市役所に死亡届を出しても、その情報が金融機関に自動で伝わるわけではありません。そのため、届出の後もしばらく引き出せる状態が続くことがあります。

凍結されると、引き出し・預け入れ・振込み・口座振替がすべて止まります。公共料金やクレジットカードの引き落としに使っていた口座は、早めに支払い方法を変更してください。

凍結前に引き出してもよいか

暗証番号を知っているご家族が、凍結前に引き出すこと自体は、できてしまいます。ただし、次の2点に注意が必要です。

  • ほかの相続人との争いの原因になります。引き出した金額と使い道を、領収書とともに記録しておいてください。
  • 相続放棄ができなくなるおそれがあります。引き出したお金を自分のために使うと、相続を認めたものと扱われることがあります。借金の心配がある場合は、手を付けないでください。

当面のお金を用意する「預貯金の払戻し制度」

遺産分割が終わる前でも、相続人の一人が単独で、一定額まで払戻しを受けられる制度があります。葬儀費用や当面の生活費に使えます。

払戻しを受けられる額は、金融機関ごとに次の計算で決まります。

相続開始時の預貯金の額 × 3分の1 × 払戻しを受ける人の法定相続分
(1つの金融機関につき、上限150万円)

たとえば、ある銀行に600万円の預金があり、相続人が子2人の場合、子1人が払戻しを受けられる額は、600万円×3分の1×2分の1=100万円です。

手続きには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍、払戻しを受ける方の印鑑証明書などが必要です。書類をそろえるのに時間がかかるため、葬儀の支払いには間に合わないこともあります。

解約・名義変更までの流れ

  1. 金融機関に連絡する:名義人が亡くなったことを伝え、相続手続きの書類を受け取ります。
  2. 残高証明書を取る:亡くなった日の残高を確かめます。財産目録や相続税の判断に使います。
  3. 戸籍を集める:亡くなった方の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の戸籍をそろえます。
  4. 分け方を決める:遺言書があればそれに従います。なければ、相続人全員で遺産分割協議をします。
  5. 書類を提出する:金融機関の所定の用紙に、必要書類を添えて提出します。
  6. 払戻しを受ける:提出からおおむね2〜3週間で、指定の口座に振り込まれます。

必要書類

金融機関によって違いがありますが、基本は次のとおりです。

場合主な必要書類
遺言書がある遺言書(自筆で法務局に預けていないものは、家庭裁判所の検認済みのもの)、亡くなった方の死亡が分かる戸籍、受け取る方の印鑑証明書、通帳・キャッシュカード
遺産分割協議書がある遺産分割協議書、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍と印鑑証明書、通帳・キャッシュカード
どちらもない金融機関所定の用紙(相続人全員の署名と実印)、戸籍一式、相続人全員の印鑑証明書、通帳・キャッシュカード

印鑑証明書は「発行から6か月以内」など、期限を決めている金融機関が多くあります。早く取りすぎないようにご注意ください。

口座が複数あるときは「法定相続情報一覧図」が便利

金融機関が3つ、4つとあると、戸籍の束をそのたびに提出して、返してもらうのを待つことになります。

法務局で「法定相続情報一覧図」の写しを交付してもらうと、戸籍の束の代わりに、この1枚を出せば済みます。交付の手数料は無料で、必要な枚数をまとめて受け取れます。複数の金融機関の手続きを、同時に進められるようになります。

どこに口座があるか分からないとき

  • 通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物、カレンダーや粗品を探します。
  • スマートフォンのアプリやメールに、ネット銀行・証券会社の手がかりが残っていることがあります。
  • 心当たりのある金融機関には、相続人であることを示す戸籍を持参して、口座の有無と残高を照会できます。

行政書士に頼めること

当事務所では、戸籍の収集、相続関係説明図・財産目録・遺産分割協議書の作成、預貯金の相続手続きのサポートを行っています。平日に窓口へ行く時間が取れない方や、相続人が遠方に住んでいる方に向いています。

不動産の名義変更は司法書士、相続税の申告は税理士の業務です。必要な場合は、どの専門家に相談すべきかをご案内します。

この記事は、2026年10月11日時点の制度にもとづく一般的な説明です。個別の事情によって、必要な手続きや結論が変わることがあります。

行政書士 小田中 勇治

トラストコンサルティング行政書士事務所(神奈川県横須賀市)。登録番号 第22090912号。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。成年後見・相続・遺言を専門にしています。

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