銀行でも法務局でも、相続の手続きでは最初に「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をお持ちください」と言われます。慣れない言葉ですが、順番に集めれば難しくはありません。
なぜ「出生から死亡まで」が必要なのか
目的は、相続人が誰なのかを、漏れなく確かめることです。
戸籍は、結婚、転籍(本籍の移動)、法律の改正による作り直しのたびに、新しく作られます。新しい戸籍には、すでに結婚して抜けた子や、認知した子が載らないことがあります。そのため、生まれた時の戸籍までさかのぼって、つなげて確かめます。
一人の方について、3〜5通になるのがふつうです。本籍を何度も移した方は、それ以上になることもあります。
必要な戸籍の範囲
| 相続人 | 必要な戸籍 |
|---|---|
| 配偶者と子 | 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の現在の戸籍 |
| 配偶者と親(子がいない) | 上記に加え、子がいないことが分かる戸籍(出生から死亡までの戸籍で確認できます) |
| 配偶者ときょうだい(子も親もいない) | 上記に加え、亡くなった方の両親それぞれの出生から死亡までの戸籍 |
| 先に亡くなった子の子(孫)が相続人 | 上記に加え、先に亡くなった子の出生から死亡までの戸籍 |
きょうだいが相続人になる場合は、集める戸籍が一気に増えます。10通を超えることも珍しくありません。
戸籍の種類と手数料
- 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書):現在の戸籍です。1通450円。
- 除籍謄本:全員が抜けて、閉じられた戸籍です。1通750円。
- 改製原戸籍謄本:法律の改正で作り直される前の、古い戸籍です。1通750円。
請求の方法は3つ
1. 本籍地の市区町村の窓口
本籍のある市区町村で請求します。戸籍は住所地ではなく、本籍地で管理されています。
2. 郵送
本籍地が遠い場合は、郵送で請求できます。請求書、本人確認書類の写し、手数料分の定額小為替、返信用封筒を同封します。往復で1〜2週間かかります。
3. 広域交付(最寄りの窓口でまとめて請求)
2024年3月1日から、本籍地が遠くにあっても、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できるようになりました。横須賀市にお住まいの方が、ほかの県に本籍のあった親の戸籍を、横須賀市の窓口で請求できます。
広域交付で取れるもの・取れないもの
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 請求できる人 | 本人、配偶者、父母・祖父母(直系尊属)、子・孫(直系卑属) |
| 請求できない人 | きょうだい、おじ・おば、おい・めい |
| 請求の方法 | 請求する本人が、窓口に行く必要があります。郵送や代理人による請求はできません |
| 本人確認 | マイナンバーカード、運転免許証など、顔写真付きの身分証明書 |
| 取れないもの | コンピュータ化されていない一部の戸籍、戸籍の附票、一部事項証明書・個人事項証明書(抄本) |
つまり、親の相続で、子が請求する場合は、広域交付でほぼそろいます。一方、きょうだいの相続では、広域交付は使えません。本籍地ごとに、窓口か郵送で請求することになります。
広域交付は、古い戸籍を確認する作業があるため、その日のうちに受け取れないことがあります。取扱いの窓口や受付時間は、事前に横須賀市の案内でご確認ください。
集めるときのこつ
- 新しい戸籍から、古い戸籍へさかのぼる。死亡の記載がある戸籍を最初に取り、「どこから移ってきたか」の記載を手がかりに、一つ前の戸籍を請求します。
- 窓口では「相続手続きに使うので、この市区町村にある出生から死亡までの戸籍をすべて」と伝える。必要なものを職員がそろえてくれます。
- 原本は1組でよい。金融機関や法務局は、確認後に原本を返してくれます。
- 提出先が多いときは、法定相続情報一覧図を作る。法務局に戸籍一式を提出すると、相続関係を1枚にまとめた証明書を、無料で必要な枚数だけ交付してもらえます。
行政書士に頼む場合
行政書士は、ご依頼を受けた相続手続きに必要な範囲で、戸籍を職務上請求することができます。きょうだいが相続人になる場合や、本籍地が各地に分かれている場合、平日に窓口へ行けない場合は、専門家に任せると負担が減ります。
当事務所では、戸籍の収集から、相続関係説明図・遺産分割協議書の作成、預貯金の手続きまでを、まとめてお受けしています。
この記事は、2026年10月11日時点の制度にもとづく一般的な説明です。個別の事情によって、必要な手続きや結論が変わることがあります。